獲得賞金4億円。
これは日本競馬の中で、獲得賞金が最も多いレースの賞金額です。
この4億円、一体どれくらいの金額が騎手に支払われるかご存じでしょうか?
「実際に馬に乗って勝たせたのは騎手だし、半分はもらえるでしょ!」、「いやいや、やっぱりその馬を所有している馬主がたくさんもらえるんじゃない?」
あなたはどう予想しますか?
この記事を読むと、その「獲得賞金の騎手の取り分」についての疑問を解決できます!
この記事をざっくり言うと…
・JRAと地方競馬騎手の獲得賞金の取り分が分かる!
・レース以外で得られる騎手の収入源が分かる!
・騎手の平均年収と最新版獲得賞金ランキングが分かる!
騎手(ジョッキー)が得られる取り分は、獲得賞金の5%
騎手(ジョッキー)の主な収入はもちろん、レースで騎乗した競走馬を勝たせたり、入着させることで得られます。
このお金を「進上金」と言うのですが、この進上金の解説と併せ、実際のレースを例に挙げ騎手の獲得賞金の取り分を説明していきます。
進上金について
進上金とは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単に言うと「賞金を獲得した馬主が調教師や厩務員、騎手に手渡す成功報酬」のことです。
- 調教師さん、良い調教をつけてくれてありがとう
- 厩務員さん、いつもお世話してくれてありがとう
- 騎手の方、良い騎乗をしてくれてありがとう
などといった、馬主の感謝の気持ちが「進上金」です。
つまり、獲得賞金は一旦全額馬主に支払われ、馬主から調教師・厩務員・騎手に配分されるということですね。
中央競馬(JRA)における騎手の獲得賞金の取り分
今お話しした通り、レースで得た獲得賞金は、レースに関わった関係者で按分されます。その按分率は下の通りです。
馬主 | 調教師 | 厩務員 | 騎手 |
---|---|---|---|
80% | 10% | 5% | 5% |
見てわかるように、騎手の取り分は全体の5%です。
例えば、1着獲得賞金が1,000万円のレースに優勝し、馬主・調教師・厩務員・騎手で進上金を按分した場合、馬主の取り分は800万円で、騎手の取り分は50万円です。
どうでしょう?多いと感じますか?それとも少ないと感じますか?
それでは実際のレースを例に挙げて騎手の進上金を見てみましょう。
レース名 | 1着獲得賞金 | 騎手賞金取り分(5%) |
---|---|---|
有馬記念・ジャパンC | 4億円 | 2,000万円 |
日本ダービー・宝塚記念 | 2億円 | 1,000万円 |
阪神ジュベナイルフィリーズ | 6,500万円 | 325万円 |
現在のJRAにおける1着獲得賞金の最高額である有馬記念やジャパンカップと、逆に1着獲得賞金がGⅠ最低額の阪神ジュベナイルフィリーズをあえて同じ表に入れてみました。
こう見ると同じグレードのレースでも、獲得賞金に応じて大きく騎手の取り分は変わってくることが、改めてわかりますね。
障害競走の場合、取り分は変わってくる
実は障害競走の場合、騎手の取り分は変わり、5%ではなく7%に引き上げられます。
これは、平坦コースを走る平地競走よりも、障害物を飛越したり長距離を走る分、落馬の可能性が高くなることが理由です。
障害競走も1つレースの例を挙げてみましょう。
中山グランドジャンプ(GⅠ)の1着獲得賞金は6,600万円。
その5%が進上金として騎手の取り分になるので、330万円です。
オジュウチョウサンで6度もこの中山グランドジャンプを勝利している石神騎手は、都度330万円をもらっていたということですね!
地方競馬における騎手の獲得賞金の取り分
ここまでJRAにおける騎手の獲得賞金について解説してきましたが、地方競馬において獲得賞金の取り分はどうなっているのか気になりませんか?
答えは、JRAと同じく地方競馬騎手の獲得賞金の取り分も5%です。
それでは、実際のレースをいくつか例に挙げてみましょう。
レース名 | 競馬場名 | 1着獲得賞金 | 騎手賞金取り分(5%) |
---|---|---|---|
東京大賞典 | 大井競馬場 | 1億円 | 500万円 |
帝王賞 | 大井競馬場 | 8,000万円 | 400万円 |
南部杯 | 盛岡競馬場 | 6,000万円 | 300万円 |
地方競馬における1着獲得賞金のベスト3をまとめてみました。
地方競馬も取り分はJRAと変わらないが・・・
JRAの騎手同様、進上金の按分率は同じく5%ですが、実は地方競馬の騎手は得られる収入が少ない傾向にあります。
先ほどの表をご覧になってお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、地方競馬における1レースあたりの獲得賞金は、JRAに比べると少額であることがわかります。
地方競馬では1億円を超える獲得賞金のレースは限られた数しかなく、獲得賞金が数百万円というレースも少なくありません。
中には1着獲得賞金が数十万円で、例えレースに勝利しても騎手の取り分は数千円というレースもあります。
そして驚くべきは、この獲得賞金額は2022年から増額されてのこの金額であり、2021年以前はこれよりも2,000万円ほど少ない獲得賞金でした。文字通りケタが違いますよね。
そのため、同じく1つのレースで賞金を獲得しても、進上金として得られる収入が少ないことになります。
地方競馬の騎手は苦労している人も多いといった声も聞きますので、ぜひとも頑張ってもらいたいですね!
まだある!騎手が賞金の他に得られる収入!
これまで、騎手がレースに出走して得られる進上金について解説してきました。
ここからは、進上金以外の騎手の収入源について紹介していきます。
騎手の主な進上金以外の収入源は「騎乗手当・騎乗奨励手当」「騎乗契約料」「調教騎乗料」「その他の収入」があります。
1つ1つ掘り下げていきましょう。
騎乗手当・騎手奨励手当について
この手当は、騎乗した競走馬が賞金を獲得できたか否かに関わらず、レースに出走した時点で騎手が得られる手当です。
成果報酬として馬主から支払われる進上金とは違い、この手当はJRAから支払われます。
手当の金額はレースのグレード、平地競走か障害競走かによって定められ、ベテラン騎手も新人騎手も変わらず、一定額が得られます。
金額については下記の通りです。
- 平地競争の場合
-
G1・・・~63,000円
その他の重賞・・・~43,000円
その他の競争・・・~26,000円 - 障害競走
-
G1・・・~144,200円
その他の重賞・・・~144,200円
その他の競争・・・~74,200円
この金額に騎手奨励手当として15,500円が追加され、1レースごとに騎手に手当として支給されています。
走って帰ってくるだけでこんなにもらえるの!?と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、命の危険が常につきまとっている馬上なので、もしかすると安いくらいなのかもしれませんね。
騎乗契約料について
特定の厩舎と契約を結んでおり、その厩舎が管理する競走馬に騎乗した場合に、厩舎から支払われる報酬です。
金額については契約する厩舎や、騎手によって異なります。
いわゆるフリーといわれるどこの厩舎とも契約を結んでいない騎手は、この報酬は発生しません。
調教騎乗料について
読んで字のごとく、調教をつけた際に発生する報酬です。
基本的には、厩舎に所属しないフリーの騎手に支払われますが、金額は1回の騎乗で数千円と言われています。
その他の収入について
騎手の収入は競馬場や厩舎の中だけで得られるものではありません。
トップジョッキーにもなれば、テレビや雑誌、YouTubeなどのメディアへの出演、書籍の販売など、その活動は多岐に渡ります。
メディアへの出演
地上波でも放送されている某スポーツ番組に、騎手が出演しているのをテレビで観たことがないでしょうか?
最近ではYouTubeに出演する騎手も多く、レースの展望や予想はもちろん、直近で観た動画では、「ソロキャンプしてみた」といった動画にまで出演している騎手もいました。
レースで稼ぐ賞金に比べると微々たる金額かもしれませんが、間違いなく出演料は発生していますよね。
出演料は安いかもしれませんが、今後もいろいろなメディアに露出することで、競馬に触れる人が少しでも増えるといいな、なんて思惑があるのかもしれませんね。
書籍の執筆
他にも、書籍を執筆して印税として収入を得るパターンもあります。
騎手が一体どんな本を執筆しているか気になりますよね?
これまで数人の有名騎手が本を執筆していますが、普通に競馬をしているだけでは絶対に知ることのできない競馬の世界や、騎手のお茶目な部分などを赤裸々に綴った書籍もあり、競馬ファンであれば楽しみながら読むことができる内容です。
気になる方がいらっしゃればぜひ手にとって読んでみてください。
もしかすると競馬の見方が少し変わるかもしれませんよ。
獲得賞金からみる騎手の年収について
ここからは、JRAと地方競馬に所属するそれぞれの騎手の平均年収について解説していきます。
1つのレースに勝利すると2,000万円、1回レースに騎乗しただけでも数万円から10万円が得られる騎手ですので、たくさん稼いでるのでは?と考える人もいるかもしれません。
それではまずJRA騎手から解説していきます。
JRA騎手の平均年収は?
JRAに所属する騎手の平均年収は、3,000〜4,000万円といわれています。
しかしこれはあくまで平均の金額です。完全実力主義であるため、もちろん数億円稼ぐ騎手もいれば、中には500万円も稼げない騎手もいます。
それでも騎乗手当などを含めると、JRA騎手は高収入の職業であるといえます。
しかし時速60キロを超える競走馬を操る騎手はとても危険な職業であり、時には落馬によって大きな怪我をすることも、時には命を落とす可能性もあることが高収入の理由の1つでしょう。
地方競馬騎手の平均年収は?
地方競馬の騎手の平均年収は300〜500万円といわれており、トップジョッキーでさえも、1,000〜2,000万円程度です。
JRA騎手と比べると、文字通りケタが違いますね。
地方競馬の騎手もJRA騎手と同じく、「獲得賞金の5%」の進上金を得られます。
ですが、先ほどお話しした通り、地方競馬のレース賞金はJRAに比べて少ない傾向があります。
また、騎乗手当や調教手当もJRA騎手と同じく支払われますが、その額は数百円〜数千円と、こちらもJRAに比べると、こちらもケタが違います。
そしてこの年収の格差は、度々問題視されることもあります。
ですが、実は最近では地方競馬も人気が上昇傾向にあり、勝馬投票券の売上も伸びていることから、得られる獲得賞金が増額になったレースもあり、地方競馬騎手の年収もそれに伴って徐々に改善傾向にあります。
今後さらに騎乗手当の増額なども見直される可能性もありますので地方競馬の騎手も頑張って欲しいですね!
最新版・騎手の獲得賞金ランキング
2021年データから、上位15位を「獲得賞金」と「推定年収(各種手当は除く)」をランキング形式でまとめました。
順位 | 騎手名 | 総獲得賞金 | 推定年収 |
---|---|---|---|
1 | C・ルメール | 44億2768万4000円 | 2億2138万円 |
2 | 福永 祐一 | 33億4880万7000円 | 1億6744万円 |
3 | 川田 将雅 | 29億6050万3000円 | 1億4802万円 |
4 | 横山 武史 | 27億8991万8000円 | 1億3949万円 |
5 | 松山 弘平 | 24億461万9000円 | 1億2023万円 |
6 | 戸崎 圭太 | 19億961万4000円 | 9548万円 |
7 | 吉田 隼人 | 18億8655万1000円 | 9432万円 |
8 | 岩田 望来 | 17億7198万7000円 | 8859万円 |
9 | M・デムーロ | 17億6671万2000円 | 8833万円 |
10 | 幸 英明 | 17億2748万9000円 | 8637万円 |
11 | 和田 竜二 | 14億4977万6000円 | 7248万円 |
12 | 武 豊 | 14億3024万6000円 | 7151万円 |
13 | 鮫島 克駿 | 13億7506万9000円 | 6875万円 |
14 | 三浦 皇成 | 13億3749万2000円 | 6687万円 |
15 | 田辺 裕信 | 13億1559万3000円 | 6577万円 |
上の表は、獲得賞金から進上金を算出し、積み上げたものです。
この金額に加え、騎乗手当や調教手当、メディア出演料などのその他の収入が上乗せになるので、実際の年収はさらに多いことでしょう。
まとめ
ここまで、騎手の獲得賞金の取り分を、JRAと地方競馬とに分けて解説してきました。
騎手の獲得賞金の取り分はJRAも地方競馬も変わらず5%(障害競走は7%)であること、獲得賞金の他にも得られる収入は複数あることをお分かりいただけたと思います。
騎手の取り分が思いの外少ないことに驚いた方もいらっしゃったのではないでしょうか?
これから競馬を観戦する際は、騎手の獲得賞金の取り分を意識してみると、競馬の楽しみ方がほんの少し増えるかもしれませんね。
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